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犬笛日記

それは犬笛のような魂の叫び

ホモの合コンに行った話

美人は3日で飽きるけど、ブスには初日が来ない。

 

世の中には、思っていても言葉にしないことがたくさんあります。
身も蓋もない言葉からは、苦笑いしか生まれないから。
耳障りのいい言葉を並べておけば、その場は切り抜けられるから。

しかし、綺麗事に囲まれていたからといって、現実が優しくなるわけではありません。

美人はモテるし、ブスはモテない。

 

顔が綺麗じゃなくても、性格が良ければ、愛嬌が良ければ、いい人に出会えるよ、という意見もあります。
それはある意味正しいと思います。私自身も、そんな風にして幸せをつかんだ人、たくさん知ってます。

 

だが、ホモの世界はもっと厳しい。

 

 

電通総研の調査によると、13人に1人はLGBTなんだそうです。
意外と多いな、という感想をよく目にするように、私たちが日常生活において、当事者とめぐり合うことはほとんどありません。みんな内緒にしているからです。ここにホモの出会いの難しさがあります。

 

友達にしろ恋人にしろ、世の中の出会いの多くは、学校や職場から発生します。

共通のコミュニティで長い時間を共に過ごしていくことで、相手の様々な顔を知り、もっと色々な表情が見たいだの、私だけに弱った姿を見せてほしいだのなんだの言って、アラやだ、アタイ、アイツのこと好きになってるやないの/// 気づいたら恋、走り出してた...とか言っちゃってるわけです。

 

長い時間をかけて、相手の内面を知り、恋心を募らせていく。時間をかけて形成されゆく内面への評価が、外見に対する印象を覆すことさえある。ブス逆転のチャンスです。

 

そのチャンスに恵まれないのがホモなのです。

前述したとおり、ホモ同士が学校や職場で出会うことは皆無です。
ホモはホモの社交場で出会いを探すしかないのです。ホモの社交場というのは色々種類があるのですが、要は「共通のコミュニティを持たないホモが介するような場所」です。そこには長い時間をかけて相手の内面を見ているような暇はありません。みんな顔しか見てない。

出会いに飢えたホモ達に与えられたわずかな時間、顔を見るなって言うほうがおかしい。ホモ達には震災時にトリアージ*1を行う医療従事者の如くすばやい判断能力が求められるのです。そこで黒(死亡)とかつけられたら終わり。手すら合わせてもらえない。そんな!まだ助かるかもしれないやないの!もっとちゃんと見てよ!!とか言ってもダメ。だって医療従事者は他の患者を見なくてはいけないのだから。グズグズしてたら助かる患者まで手遅れになってしまうから。

 

そんな厳しいホモの世界の合コンに行ってきました。といっても、ホモが90人飲み屋に集まって、人見知りを発揮させて身内と喋ることで時間を過ごすただの飲み会。ホモだって普通の人間だから、知らない人に話しかけて傷つくことは怖いのです。むしろすごく臆病。人間は人の痛みを知るほどに、優しくなる代わりに脆くなる。

 

だからホモの出会いは難しい。しかし、どんな課題にも方法論がある。私たちは、たとえ失敗を繰り返したとしても、傷ついたとしても、少しずつでも前に進まなくてはいけない。PDCAサイクルを回さなければならない。

 

ということで、一緒に参戦する非モテアラサーのホモ友達と1週間前から作戦を練ることにしました。貧乏暇なしとは言うけれど、恋愛貧乏に与えられるのは暇しかない。

私たちが1週間かけて練り上げた3つの作戦がこちら。

■作戦名:
①イケブスどすこい作戦 
②ザビエル作戦〜信じるブスは救われる〜
③スチュワーデス作戦

■概要:

①イケブスを狙ってアプローチする。イケブスとは、イケる*2ブス*3のことと定義する。

②フラれたら十字架切って「ザーメン」つって祈りを捧げる。

③お客様の中にビー専(ブス専)の方はいらっしゃいませんかー!つって呼びかける。

■背景:

①イケメンは競争率が高くて私たちのことなんて見えない。隙間産業を狙うブルーオーシャン戦略*4をとる必要がある。

②イケブス会→イエズス会→ザビエル
言ってしまえばただのダジャレ。しかし、心の脆いホモにとって、フラれた際に自分の心を守るためのルーティーンを用意しておくことは重要。

③人類の多様性に懸ける。

 

 

諸葛亮孔明もビックリの作戦を携えていざ参戦。

 

そして気付いた。90人もいる空間の中で見知らぬ他人に突然話しかけるなんてナンパでしかない。ヘイ彼女ひとり〜?つって。ていうかほぼ確実に1人じゃないし。囲まれてるし。友達に。そしてわたしと同じようなハイエナに。イケメンは嫌でも1人になんてなれない。私たちがそうはさせない。

 

ていうか案の定みんな知り合いとばっか話し込んでっし。よぉ久しぶりーとか言って。私も行こうかな。久しぶりー。前世ぶりーつって。
こういう時に知らない人に話しかけられる人ってホント信じられない。あなた感情ないんじゃないの?って思う。わたし感情の塊だから、ヘイ彼氏!俺で妥協しなーい!?って言えない。

 

しかもイケブス狙うはずが気付いたらイケメンばっか見ちゃう追っちゃう探しちゃう。横でブス友がもっと現実を見てー!って叫んでるけど全然耳に入ってこない。夢を追いかけてなにが悪いの?諦めないでと叫び続ける心の中の真矢みきを、止める権利など誰にもない!イケブス作戦失敗。ザーメン。

 

挙げ句の果てに私がずっと目でストーキングしてたイケメンに5年付き合ってる彼氏がいるとか風の噂で聞こえてくるし。風の噂でフラれるとかなんなの?かまいたちなの?カマによるカマのためのカマいたちの夜なの?ていうか彼氏がいるならお歯黒でも塗っとけよって話。夢見て傷つくブスの気持ちも少しは考えろって小一時間説教したい。個室で2人っきりで話し合いたい。そして俺のことを好きになって欲しい。

 

こうなったらもう最後の手段しかない。

 

お客様の中にビー専の方はいらっしゃいませんかー!!

 

...いなかった。ビー専どころか人っ子ひとりいないんじゃないのこの機内。ねーねー機長、乗客乗せ忘れてない?私の声、犬笛みたいになってんですけど。ほーらね聞こえないでしょー?って感じ。ザーメン。無念。

 

もうね。ザビエルしか味方がいない。そもそもよく見たらフラれた時の作戦しか用意してねぇし。現実路線踏みすぎだし。
飲み物取りに行くイケメンの足が私のカラダにぶつかった瞬間がハイライトってくらいセクシャルイベント皆無だし。

 

一番気分がアガったことはといえば、ブス友に肌キレイになったんじゃない?ってブスを褒めざるを得ない際の常套句みたいなこと言われてひっそり喜んだことくらいだし。流石ブスはブスの喜ばせ方が分かってんなぁ。ブスの良いところは人の痛みを知っていること。わたしたちは今日もまたこうして、少しずつ優しくなっていく。脆くなっていく。

 

*1:災害時など、大量に医療を必要としている患者がいる際に、重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。優先度に応じて、色のついた札を患者に貼る。

*2:ホモの世界では、イケてる人をイケると表現することが多い。性的にイケる(やれる)というゲスな意味から来ている。

*3:ホモの世界では挨拶感覚でブスって言う人が多い。そのせいで、ブスという言葉がカジュアルに用いられる文化がある。それ以外にも、一般人からしたら口の悪い奴らだなって思われそうな文化がたくさんある。

*4:海外の偉い教授が唱えた経営戦略論。競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべきだと説いたんだとか。